この練習の設問1では、既存客の再来店を妨げている状態を二つ書きます。設問2の助言では、その状態を変えるために誰に何をするかまで書きます。この違いを押さえてから、設問に合う事実を選びます。知っている施策を並べるだけでは、設問で聞かれた相手や目的から外れやすくなります。
住宅街の自転車店の自作事例で、誤答案と修正版を比べます。事例Ⅱのような顧客・販売の判断を題材にした短い練習で、公式問題や採点基準ではありません。文字数は句読点も1字として数えます。別の本試験問題を振り返るときは、設問の文脈と公表された出題趣旨に照らして求められた答えを判断します。
自作の与件|住宅街の自転車店B店
P1 B店は住宅街にある自転車店で、店主と従業員3人で営業している。購入客からは点検時の丁寧な説明が評価されている。
P2 子ども用自転車を購入する家族連れが多い。一方で、購入後1年以上来店していない既存客が相当数おり、店から購入後の点検案内は出していない。
P3 顧客の車種・点検履歴・連絡への同意は紙で記録している。記録を探すのに時間がかかり、点検時期に合わせた案内対象をすぐには選べない。
P4 週末は修理待ちが生じる一方、平日午後には作業の空きがある。既存のWebサイトには予約フォームがあるが、購入後の点検案内には使っていない。
P5 店主は今後6か月、増員や新店開設をせず、現在の店で既存客の再来店を増やしたいと考えている。購入客が安さを最優先しているかどうかは調べていない。
- 設問1 B店が既存客の再来店を増やすうえで抱える課題を2つ、合計100字以内で述べてください
- 設問2 現在の人員と店舗を使って既存客の再来店を促す施策を、100字以内で助言してください
この二つの設問では、課題と施策を書き分ける

| 確認点 | 設問1 | 設問2 |
|---|---|---|
| 求められるもの | 現状の課題を2つ | 今後の施策 |
| 対象 | 既存客の再来店 | 既存客の再来店 |
| 制約 | 合計100字以内 | 現在の人員と店舗、100字以内 |
| 混ぜないもの | 施策の羅列だけで終わること | 新店開設や増員を前提にすること |
設問1に「案内メールを送る」と書いても、それは施策であって課題ではありません。「購入後の案内がなく、接点が途切れている」と状態を書く必要があります。反対に設問2では、「案内がない」で止めず、誰に何をどう案内するかを示します。
事実から提案へつながれば、施策が原文になくても使える
与件に書いていない施策でも、事実から理由を説明できれば助言に使えます。点検案内がないなら案内を送り、平日午後に空きがあるならその時間の予約を案内する、というつなげ方です。ただし、設問の対象と制約を守る必要があります。
P2からは購入後の接点がなく、P3からは案内する客を選びにくいことが分かります。対策に使えるのが、P4の平日午後の空きと予約フォームです。P1の丁寧な説明は案内で伝える価値です。P5の条件を守るため、増員や新店を前提にしない施策を考えます。
与件で分かるのは、家族連れが多いことと平日午後に店の空きがあることです。SNSへの反応や価格の重視度、客が来店できる時間はまだ分かりません。そのため平日午後への案内は提案として書き、再来店が増えたという実績とは分けます。
新店や新規客への施策は、今回の設問の対象から外れる
| 架空の答案 | この練習で点検する箇所 | 直す方向 |
|---|---|---|
| 設問1 SNSで若者を集め、割引を行い、店舗を増やすべきである | 課題2つへの回答になっていない。既存客から新規客へずれ、新店はP5に反する | P2とP3から、再来店を妨げている状態を2つ記す |
| 設問2 新店を出してスタッフを採用し、すべての客に値下げを知らせる | 人員・店舗の制約に反する。一律値下げの根拠や対象の同意も確認できない | 記録済みの同意・車種・履歴と、現在の空き時間・予約手段を使う |
| 設問2 点検の説明が丁寧で、記録が紙であり、平日午後に空きがある | 事実は拾えているが、誰に何をするかという助言がない | 事実から具体的な行動へつなぎ、目的を添える |
この誤答案は、単語を少し直すだけでは設問に合いません。既存客の再来店という対象に戻り、P2・P3の課題とP4の手段を使って組み直します。新規客を集める案や新店を出す案は、今回の答えから外します。
点検案内と顧客記録の整理が、二つの課題に対応する
設問1の答案例(57字) 購入後の点検案内がなく既存客との接点が途切れていることと、紙の顧客記録を探す手間で案内対象を選びにくいことである。
前半はP2を使って「購入後の接点がない」という課題を、後半はP3を使って「案内する客を選びにくい」という課題を書いています。2つ合わせて100字以内です。この表現を暗記するのではなく、どの事実から課題を書いたかを読み取ります。
設問2の答案例(74字) 同意のある既存客の車種と点検履歴を整理し、点検時期を個別に案内する。平日午後の予約枠と既存の予約フォームを案内に添え、再来店を促して混雑を分散する。
| 答案中の内容 | 根拠と役割 |
|---|---|
| 同意のある既存客の車種と点検履歴を整理 | P3。案内する対象を選ぶ準備 |
| 点検時期を個別に案内 | P2・P3。購入後の接点がない状態への対策 |
| 平日午後の予約枠と既存フォーム | P4。現在の空きと受付手段を利用 |
| 再来店を促して混雑を分散 | 設問2の目的とP4から考えた狙い。成果が実現したという事実ではない |
この答案はP5の条件を守り、今の店と働いている人でできることを提案しています。どれくらいの作業になるかや客がどう反応するかは、与件に書かれていません。売上が増えると決まったようには書かず、設問が求める施策とその根拠を示します。
別の答案例(73字) 連絡に同意した既存客へ、車種と点検履歴に合わせて点検を案内する。丁寧な点検説明の価値を伝え、既存フォームで平日午後の予約を受け付けて再来店を促す。
こちらはP1の丁寧な説明への評価を、案内で伝える価値として使う案です。最初の例と表現が違っても、対象・根拠・制約がつながるかを確かめます。「説明の価値を伝える」という提案を、既に実施して効果が出た事実へ書き換えてはいけません。
答案にP番号を付けると、使った事実と提案のつながりが見える
答案の主な語句に、根拠となったP番号を付けてみます。番号を付けられない提案があれば、与件から説明できるかを見直せます。点検するのは設問が求める答え、誰を対象にするか、使った事実です。守る条件と提案に至る理由、文字数も合わせた六つで見直します。公式の採点表ではありません。
字数を削るときも「既存客」などの対象や「現在の人員」といった条件は残します。一方ですべての段落を答案へ詰め込む必要はありません。今回の設問に使わない理由を説明できれば、使わない情報があってもかまいません。
中小企業診断協会の公式FAQでは、一次の正解・配点の公表と、二次の出題趣旨の公表を区別しています。学校や記事の解答例を、試験実施機関の公式模範解答や公開採点基準として扱わないようにしてください。
形式の確認では2025年度の公式事例Ⅲ(PDF)を実読し、与件と設問ごとの要求・文字数制限を確認しています。このページの自転車店の設定・設問・答案は、要求と根拠の対応を練習するために独自に作成しています。
どの事実を使うかで迷ったら、答案と根拠を一緒に添削してもらう
自分の答案と与件のつながりを説明できたら、別の事例でも同じ点検を続けられます。制約は守れるのに使う事実を選べない場合は、答案と一緒に根拠にした段落も見てもらいます。どの事実から先に使うとよいかまで教えてもらうためです。
追加支援を検討する人は中小企業診断士の通信講座比較で、二次の答案添削・質問・返却時期が含まれる範囲を確認してください。解答例を読むだけで足りるのか、自分の答案への指摘が必要なのかを決めてから選びます。
公式情報の確認日は2026年10月1日です。この自作練習で得点が上がるかや、本試験と難しさがどのくらい近いかは検証していません。答案例への一致率を合格可能性に換算せず、根拠を説明して修正できたかを振り返る教材として使ってください。
書いて整理したい方には、中小企業診断士の二次試験で与件を使えないときは?設問と根拠を結ぶ練習 回答用シート(PDF)も使えます。
