個人同士の売買を宅建業者が媒介するとき、35条は契約前に買主へ説明し、37条書面は契約後に売主・買主の双方へ渡します。どちらも宅建士の記名が必要です。重要事項の説明を行うのは35条の段階です。37条では、成立した契約の内容を書面で交付する義務を学びます。
売主Aと買主Bはいずれも宅建業者ではなく、M社1社が媒介し宅建士Tが担当する設定です。6つの自作例はこの売買に絞り、全記載事項や実取引の適法性までは判定しません。賃貸・代理・業者間取引は別の条件で学ぶ範囲です。
根拠資料は2026年10月1日に確認しました。国土交通省の2026年4月1日施行分の解釈・運用と参考様式、令和6年12月版の電子書面・IT重説マニュアル等を照合し、そこで確認できた範囲に絞っています。
35条は買主への契約前説明、37条は双方への契約後交付

35条は、買主Bが重要な内容を理解してから契約できるようにする説明です。37条書面は、M社の媒介で契約が成立した後、その契約の当事者である売主Aと買主Bの両方へ渡します。
| 比べる項目 | 35条書面・重要事項説明 | 37条書面 |
|---|---|---|
| 今回の相手 | 取得しようとしている買主B | 売主Aと買主Bの両方 |
| 今回の時点 | 契約が成立するまでの間に、書面を交付して説明 | 契約成立後、遅滞なく交付 |
| 宅建士の役割 | 説明を行い、宅建士証を提示する。書面の記名も必要 | 書面の記名が必要 |
| 説明との区別 | 書面を渡すだけでは、今回の重要事項説明を終えたことにならない | 35条と同じ宅建士による説明義務を、37条の交付義務へそのまま追加しない |
| 電子にする場合 | 受け取る相手の承諾と所定の条件を確認 | 受け取る相手ごとに承諾と所定の条件を確認 |
根拠は国土交通省マニュアルの参照条文抄録(印字37〜39ページ)と、2026年4月1日施行分の解釈・運用です。37条に35条と同じ説明義務がないことを、契約内容について質問されても説明しなくてよいという意味へ広げないでください。
37条の「遅滞なく」を、ここに示されていない日数に置き換えて覚えないようにします。まず押さえるのは、35条の説明は契約前、37条書面の交付は契約成立後という順序です。
書面を交付する義務は宅建業者、説明と記名は宅建士の役割
2026年4月1日施行分の重要事項説明書の第一面を見ると、宅建業者の商号・代表者の欄と、説明する宅建士の氏名・登録番号等の欄は別です。会社名を書くだけで、宅建士の説明や記名を済ませたことにはなりません。
書面を交付する義務を負うのは宅建業者です。一方で、35条の重要事項を説明し、各書面に宅建士として記名する役割は宅建士が担います。書類を届ける作業と、説明・記名の役割を分けると整理できます。
電子書面は提供方法、IT重説は説明方法
電子書面は「書面をどう渡すか」、IT重説は「どう説明するか」の話です。紙の書面を先に渡し、説明だけオンラインで行うこともあります。オンライン会議をするからといって、書面まで自動的に電子提供になるわけではありません。
| 別に確かめること | 今回そろえる条件 |
|---|---|
| 電子提供への承諾 | 相手へ方法・ファイル形式等を示し、書面等の記録に残る方法で承諾を得る |
| 電子書面の状態 | 書面へ出力でき、改変されていないことを確認できる措置があり、宅建士の記名を満たす |
| 相手への到達 | 相手が受け取り、文字欠け等なく読めるかを確かめる |
| IT重説の開始前 | 記名された35条書面と添付書類を先に渡し、相手が手元で読めるかを確かめる |
| IT重説の実施環境 | 映像・音声で互いにやり取りできるかを確かめる。相手が宅建士証を目で見て読み取れたかも確かめる |
これらは2026年の解釈・運用(印字22〜23・35〜36・38〜39ページ)と、国土交通省ハンディガイド(9〜11ページ)で確認できます。映像や音声が使えない状態になったときは説明を中断し、解消後に再開するという条件もあります。
6場面で相手・時点・宅建士の役割を比べる
次の6場面は、この売買を使った自作問題です。まず相手と時点が合っているかを考えます。宅建士の役割や電子・ITの条件に不足がないかも、別に点検します。答えを開く前に、どこをどう直すかを一文で書いてみます。
場面A 相手・時点
M社は契約前に、宅建士Tが記名した紙の35条書面を買主Bへ交付し、Tが宅建士証を提示して重要事項を説明する。契約が成立したら、Tが記名した紙の37条書面を売主Aと買主Bへ遅滞なく交付する。
場面Aの回答を開く
- 35条は取得する買主Bへの契約前の説明、37条は媒介した契約の各当事者A・Bへの成立後の交付と分けている。
- この流れを基準にする。ただし全記載事項や実際の取引の適法性まで確認した判定ではない。
場面B 時点
Bが急いでいるため、今日は売買契約だけを成立させる。Tによる35条の重要事項説明は、37条書面を渡す明日にまとめる。
場面Bの回答を開く
- 買主が急いでいても、今回の35条の説明を契約成立後へ回すことはできない。37条書面の後日の交付で、契約前の説明を代用しない。
- 契約を成立させる前に、M社による35条書面の交付とTによる説明を済ませる流れへ直す。
場面C 相手
35条の説明をBだけに行ったので、37条書面もBだけへ交付する。売主Aには代金の入金予定だけを知らせ、37条書面は交付しない。
場面Cの回答を開く
- M社の媒介によって成立した売買なので、37条書面は各当事者A・Bへ交付する。35条の説明相手から、そのまま37条の交付先を写さない。
- 成立後遅滞なく、AとBの両方へ37条書面を交付する。
場面D 宅建士の役割
宅建士ではない担当者Sが、35条・37条書面の宅建士としての記名を自分の氏名で済ませる。35条の説明もSだけで行い、宅建士Tは関与しない。
場面Dの回答を開く
- 35条の説明をする宅建士と、35条・37条書面の宅建士としての記名を、非宅建士Sで置き換えることはできない。会社名や代表者名が書いてあることと、宅建士が記名することは別である。
- 35条の説明は宅建士が行い、各書面の宅建士の記名も満たす。書類を届けるだけの作業と、説明・記名の役割を混同しない。
場面E 電子提供の相手別確認
Bは37条書面を電子で受け取る方法と形式に承諾した。Aの承諾はまだないが、M社はBが承諾したのでAにも同じ方法で電子提供してよいと考えた。
場面Eの回答を開く
- 電子提供では、提供を受ける相手ごとの承諾を確認する。Aが承諾していない事実を残したまま、契約の両当事者に承諾があるものとして処理しない。
- Aについても所定の方法で承諾を確認するか、Aには紙で交付する。Bの電子提供も、記名・出力可能性・改変確認等の条件を別に確かめる。
場面F IT重説の事前交付
Tはビデオ会議で35条書面と添付書類を画面共有すれば十分と考えた。Bには事前に紙も電子書面も渡さず、会議の後で送る予定にした。
場面Fの回答を開く
- IT重説では宅建士が記名した35条書面と添付書類の事前交付が必要になる。Bが書面を読みながら説明を受けられる状態にする。映像・音声でやり取りできることも欠かせない。
- 説明前に書面と添付書類を交付し、Bが手元で読めるかを確かめる。Tの宅建士証の提示と視認確認、双方向でやり取りできる環境も整える。
契約書を37条書面にできるかは、記載事項で決まる
相手と時点、宅建士の役割を理解したら、次は書面に何を書くかを学びます。手持ちの教材を取引の種類ごとに読みます。35条だけの項目と37条だけの項目、両方に必要な項目を確かめましょう。
また、表題に「契約書」とあれば自動で37条書面の条件を満たすわけでもありません。2026年解釈・運用の印字37ページは、37条で求める事項が書かれた契約書なら、その契約書を同条の書面にできると説明しています。
同じ種類の誤りが続くなら、理由が分からない一文を質問します。「なぜこの相手に渡すのか」まで尋ねると違いを整理できます。法改正への対応が不安なら対象年度の教材を、解説を読んでも理由が分からないなら質問できる講座を選ぶと、足りない支援を補えます。
宅建の通信講座比較では対象年度と解説・演習の範囲を比べられます。質問の条件と費用も確認できます。手持ち教材で理由まで説明できるなら、総合講座を買い直す前に別の問題でも相手・時点・役割を説明してみましょう。
よくある質問
- 35条書面と37条書面は、どちらも宅建士が記名しますか?
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どちらも宅建士の記名が必要です。電子提供でも、2026年の解釈・運用に記名が必要と示されており、会社名だけで代用する扱いにはしません。
- 37条書面は宅建士が説明しなければなりませんか?
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37条書面の交付について、35条と同じ宅建士による重要事項説明の義務があるわけではありません。ただし、契約内容について一切説明しなくてよいという意味ではありません。
- 書面を画面共有すれば、IT重説の準備は完了ですか?
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画面共有だけで書面と添付書類の事前交付を済ませたことにはなりません。相手が受け取った書面を読める状態にします。映像・音声でやり取りできるかと、相手が宅建士証を視認できたかも別に確かめます。
- この6場面が解ければ、35条・37条の試験範囲は終わりですか?
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相手・時点・役割の限定練習なので、全範囲を終えたとは扱えません。記載事項や取引類型による条件は、受験する年度に対応した法令・教材で別に確認してください。
編集・教材作成 学びを選ぶ。国土交通省の公開資料の該当部分を照合し、学習用に整理しています。実取引の手続や書面は、取引条件に応じて担当者へ確認してください。
書いて整理したい方には、宅建の35条と37条を混同しない|相手・時点・宅建士の役割を整理 回答用シート(PDF)も使えます。
