社会人が資格を取る価値はある?市場価値・実務価値・学習時間から判断

執筆・編集:まっく部長公開日:

資格が希望する仕事や担当業務の条件なら、取得する意味があります。必須ではなくても仕事で使う知識が増えるなら、資格の勉強は学び直しの方法になります。一方で決算や開発の実務経験が必要な仕事は、試験合格だけで経験を置き換えることはできません。

看護師のように資格が仕事の入口になる場合と、経理事務のように知識を補う場合では、資格の使い道が違います。資格の難しさより、取った後にどんな仕事をできるかが大切です。本文では公的な職業情報30職種を使って、その違いを見ていきます。

目次

看護師などは免許が職業の入口となり、キャリアコンサルタントは名称を使うために登録が必要です。電気工事や建築では担当する工事・設計・配置上の役割によって要件が変わります。

区分意味厚労省資料の例
業務独占資格有資格者以外が携わることを禁じられている業務を行える資格弁護士や公認会計士、医師、看護師など
名称独占資格有資格者以外はその名称を名乗ることが認められていない資格保育士や栄養士、社会福祉士、キャリアコンサルタントなど
設置義務資格特定の事業を行う際に法律で資格者等の設置が求められる資格衛生管理者など

一次資料 厚生労働省「既存の国家資格の概要」(PDF)

建築施工管理技術者として入職することと、主任技術者・監理技術者を担うことは別の条件です。中小企業診断士の登録も経営コンサルティング全般を行う条件と同じではありません。職業名だけでなく任される仕事まで見ると必要な資格が分かります。

補足資料 厚生労働省「各介護サービスについて」訪問介護の資格・研修要件/国土交通省 建築士に関するQ&A/国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」/job tag「経営コンサルタント」

月次決算の経験が必須の求人は、簿記合格だけでは応募条件を満たせない

資格を歓迎する求人でも、実務経験の条件は別に残ります。次の例では、資格の勉強と経験を積む方法を組み合わせています。

この例では、資格の申込みより基礎学習と経験づくりを先にする

40代で半年後の経理応募を目指す架空の例です。A・Bどちらも簿記2級は法的な入職条件ではありません。Aは簿記2級歓迎ですが月次決算の経験が必須なので、資格だけでは条件を満たせません。Bは未経験で応募できるため、入社後の研修と担当する業務が選ぶポイントです。

STEP
2週間だけ基礎を試す

週4時間、教材等の費用は3,000円以内とします。資格対策を一通り始める案と比べ、まず仕訳・月次処理の基礎を学ぶ案を選びます。受験・講座・更新の総費用は未調査なので、本申込みは保留です。

STEP
経理の仕事に関われる機会を相談する

今の職場で経理補助を任せてもらえないか相談します。求人Aに必要な経験をどう積むかと、求人Bの研修で何を学べるかは別に調べます。

STEP
2週間後に続け方を見直す

基礎演習がどこまで分かったか、週4時間を続けられたかを振り返ります。社内で仕事を経験できる見込みも判断材料です。資格が応募条件となる求人を選ぶなら、ここから受験計画を作ります。

必要な勉強を仮に100時間と見積もると、週4時間では25週かかります。半年後に仕事へ使いたいなら、資格全体を学ぶ時間と必要な単元だけ学ぶ時間を分けて考えられます。

30職種を比べると資格と経験の役割が見える

資格が必要になる仕事と、経験を重ねることが中心の仕事を6分野・30職種で比べられます。各分野は5職種ずつです。仕事の入口に必要な資格と、就職後に特定の役割を担う資格を区別しました。資格の役割を比べるために選んだ事例であり、日本の仕事全体で資格が必要な割合は示していません。

医療・福祉|5職種
職種資格の位置づけと確認点
看護師看護師として就業するには、所定の養成課程等を経て国家試験に合格し、免許を取得する必要がある
薬剤師原則6年制の薬学課程を卒業し、国家試験合格後に名簿登録・免許取得が必要
理学療法士理学療法士として就業するには、所定の養成課程等を経て国家試験に合格し、免許を取得する必要がある
訪問介護員/ホームヘルパー担当業務に応じた資格・研修要件があり、初任者研修等が代表的な入口。生活援助中心型には生活援助従事者研修の経路もある
医療事務入職に特定資格は必要とされず、関連する民間資格や実務学習がある
建築・設備・技術|5職種
職種資格の位置づけと確認点
電気工事士法令で定める電気工事には資格が必要で、種別により従事できる工事範囲が異なる。入社後に取得する経路もある
電気技術者入職に特定資格は必須ではないが、担当業務や選任される役割によって国家資格が必要になる場合がある
建築設計技術者設計補助等への入職と、建築士として自らの責任で設計することは別。法令で定める建築物の設計・工事監理には建築士資格が必要
建築施工管理技術者入職に特定資格は必須ではないが、主任技術者・監理技術者等には工事業種と役割に応じた資格・経験等の要件がある
自動車整備士無資格で入職し、働きながら取得する経路もある。整備士資格は就職に有利とされ、希望する担当業務・役割の要件も確認したい
経理・人事・事務|5職種
職種資格の位置づけと確認点
経理事務入職に特定資格は必須ではなく、中途採用では実務経験が求められる傾向。簿記等は仕事に役立つ関連資格
人事事務入職に特定資格は必須ではなく経験が重要。社労士等の知識に加え、衛生管理者として選任される場合などは別の要件がある
一般事務入職に特定資格は必須ではないが、MOS等の資格や簿記・英語などの業務関連技能が役立つ場合がある
社会保険労務士社会保険労務士として活動するには、資格要件を満たし、名簿登録等が必要
税理士資格要件を満たし、日本税理士会連合会への登録等が必要。試験合格ルートでは2年以上の実務経験も必要
IT・デジタル|5職種
職種資格の位置づけと確認点
ITコンサルタントITやコンサルティング等の実務経験・専門能力を重ねる経路が中心
システムエンジニア(受託開発)入職に特定資格は必須ではなく、研修・OJT・開発経験を重ねる。基本情報・応用情報等の資格を取得する人もいる
プログラマー実装経験を重ねる仕事で、資格は必須ではないが、基本情報技術者等が入職時に有利とされる
データサイエンティスト統計・数学・IT・ビジネス理解等の専門知識やデータ分析経験が中心
セキュリティエキスパート(オペレーション)セキュリティエキスパート(オペレーション)は資格必須ではなく経験・実績が重要。情報処理安全確保支援士等が関連資格
営業・企画・管理|5職種
職種資格の位置づけと確認点
企画・調査担当入職に特定資格は必須ではなく、企画・収益・マーケティング等の実務知識や経験を使う
Webマーケティング(ネット広告・販売促進)Webマーケティング(ネット広告・販売促進)は資格必須ではなく、広告運用・分析・企画等の実務能力を磨く。資格を学ぶことも、知識を深める方法の一つ
人事課長人事実務・管理能力・経験が中心。担当する安全衛生上の役割等によって資格取得が求められる場合もある
営業課長営業経験・実績、部下の指導、交渉・マネジメント能力が中心。企業ごとの昇進要件も確認
総務課長総務課長自体に特定資格は必須ではないが、所属組織や担当する役割により衛生管理者等の取得が求められる場合がある
専門サービス|5職種
職種資格の位置づけと確認点
弁護士原則として司法試験・司法修習等を経て、弁護士名簿に登録する資格職
行政書士資格要件を満たしたうえで、行政書士名簿への登録・行政書士会への入会等が必要
公認会計士試験合格、所定の業務補助等、実務補習・修了考査を経て登録する
中小企業診断士中小企業診断士としての登録には所定の試験・実務補習等又は養成課程が必要。ただし、経営コンサルタント一般に診断士資格は必須ではない
キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント相談に関わる仕事へ就くとき、どの仕事にも特定の資格が必須というわけではない。ただし「キャリアコンサルタント」を名乗るには国家資格の要件を満たし、名簿登録が必要

経理事務に就くために特定の資格が必須とはされていませんが、中途採用では決算や財務の経験を求められる傾向があります。簿記を学ぶと仕事を理解する助けになります。ただし経験も必要な求人では、これまでにどこまで担当したかを説明します。

ITコンサルタントや管理職は実務の積み重ねが中心です。SEやプログラマーでも、資格学習と開発経験を組み合わせることで知識を整理する使い方があります。

一覧の調べ方と制度上の例外を読む

資格によって仕事との接続がどれくらい違うのかを見るため、学びを選ぶでは厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagを使って30職種を確認しました。job tagは2026年3月17日の更新で15職業が追加され、掲載職業数は556職業になっています。

調査条件|job tag30職種の資格と仕事の関係
  • 再確認日 2026年10月1日
  • 確認資料 厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」各職業ページ
  • 対象 医療・福祉と建築・設備・技術、経理・人事・事務。IT・デジタルと営業・企画・管理、専門サービスを加えた6分野×5職種=30職種
  • 確認項目 入職時の資格必須性と、資格で担当業務・役割が変わるか。関連資格の位置づけと実務経験の重さも対象
  • 抽出方法 資格の役割の違いを比較するため、6分野から5職種ずつ選ぶ目的抽出。求人票30件の集計でも、統計的な無作為抽出でもない

今回の30職種から「日本の仕事の何%に資格が必要」と推定することはできません。資格が職業への入口になる場合と役割を変える場合を比べる編集部調査です。知識・技能の補強材料になる場合と、実務能力が中心になる場合も比較しています。

一次資料 job tag「2026年3月17日 リニューアル」

表は各職業の一般的な入口をまとめたものです。個別の受験・登録ルートと例外は、該当する制度の案内で補ってください。担当業務の要件は、リンク先の職業情報と所管機関の最新案内で確認してください。

資格の知識が増えることと収入が増えることは別

資格を学んで仕事が分かるようになることと、採用されたり給与が上がったりすることは別です。応募では条件を満たすか、職場では任せられる仕事が増えるかを見ます。学ぶ本人にとっては、そのための時間と費用を負担できるかも大切です。

2026年公表の能力開発基本調査では、自己啓発を行った正社員の理由は現在の仕事が82.9%でした。将来の仕事は58.9%、資格取得は35.5%です。複数回答であり、資格の効果を比べた数字ではありません。

自己啓発の理由と学習負担の公的調査
自己啓発を行った理由(正社員・複数回答)割合
現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため82.9%
将来の仕事やキャリアアップに備えて58.9%
資格取得のため35.5%
昇進・昇格に備えて19.8%
転職や独立のため8.7%
出典 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」概要63頁・図87。自己啓発を行った正社員の複数回答で、2024年度に行った自己啓発についての回答。個人調査は調査対象事業所に属する労働者を対象としており、社会人全体の比率ではありません。

一次資料 厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」/調査結果の概要(PDF)

厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」で、自己啓発を行う上で何らかの問題があると回答した正社員は82.8%でした。問題点では「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」58.5%、「家事・育児が忙しい」27.4%でした。「費用がかかりすぎる」26.2%のほか、「コース受講や資格取得の効果が定かでない」11.4%という回答もあります。

この調査は資格取得だけを調べたものではなく、自己啓発全般についての回答です。ただし、勉強する時間が取れない、費用がかかる、学んだ効果が分からないという悩みは、自分の学習計画を考える材料になります。

一次資料 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査 調査結果の概要」概要65〜66頁・図90〜92

資格取得者と採用担当者の調査を読む

労働政策研究・研修機構(JILPT)が2014年に実施した「職業資格の取得とキャリア形成に関する調査」では、職業資格所持者8,316人を対象に資格取得後の状況を調べています。WEBモニターへのアンケートで、現在の求人を調べたものではありません。

この調査では、資格取得による働き方・処遇について「特に変化なし」が約6割、収入面では「特になし」が7割でした。一方で、資格取得についての総合評価では約4分の3が肯定的で、最もよかったこととして専門能力・知識の向上を挙げる人が多くなっています。

この調査は2014年3月実施です。2026年現在の資格市場や転職市場の比率を示す最新データとして使うことはできません。本記事では「資格の価値は処遇・収入の変化だけでは測れない」という過去の公的調査として限定的に参照します。

一次資料 労働政策研究・研修機構「職業資格の取得とキャリア形成に関する調査」

2026年の民間調査には、採用する側が資格をどう見ているかを考える参考データがあります。「日本の資格・検定」がMS-Japanの協力で行った調査では、企業の採用担当者または採用業務経験者などから得た713回答のうち、採用業務に現在または過去に携わった405人を集計対象としています。

中途採用で資格・検定が評価や採用判断に影響することについて、「一定の参考にしている」61.0%が最多で、「具体的に考慮している資格・検定がある」14.8%でした。回答者が資格をどう扱うかを示す数字であり、資格取得による採用確率の上昇を測った結果ではありません。

この数字を単純に足して「日本企業の75.8%が資格を重視している」と一般化するのは適切ではありません。管理部門と士業の専門サイト「Manegy」を通じ、2026年1月19日〜2月2日に行われた民間インターネット調査であり、内訳を見ると「具体的に考慮」より「一定の参考」が大きいからです。

民間一次調査 日本の資格・検定「転職で資格は武器になる?採用担当者405人に聞いた、資格が評価につながる条件」

資格全体を学ぶか必要な単元だけ学ぶかを選べる

資格が仕事や応募の条件なら取得ルートを確認し、必要なのが知識なら部分学習、経験や用途が不明なら実務機会を調べる。時間・総費用・根拠を残して判断を見直す。

応募や担当する仕事に資格が必要なら、取得に向けて学びます。今の仕事で会計やITの知識を使いたいだけなら、必要な単元から学んで試す方法もあります。資格と経験の両方が求められるなら、社内で担当できる機会や補助の仕事も探します。

学ぶ人が用意するのは受験料だけではありません。教材や講座、登録・更新のお金に加え、毎週勉強する時間も必要です。学びを選ぶの3つの評価基準で、採用・実務・学習への投資を分けて考えられます。

資格の価値を比べる3つの基準

40代で転職に使う資格を考えている場合は、求人の資格条件と実務経験を照合する方法で、取得前に確認する項目を整理できます。

30代で取得する資格を絞りたい人には、現職の課題と将来の役割から候補を比べる記事があります。仕事で使う場面を基準に学習を選べます。

50代では、現職・再雇用・退職後のどこで使うかによって資格の優先順位が変わります。働く場面ごとに候補を絞る記事も用意しています。

仕事に使いたい資格が決まったら講座を比べる

これからの仕事を広げるために勉強したいなら、一人で理解できない内容は質問し、答案を自分で直せないときは添削を受ける方法があります。質問・添削・受講期限の違いを比べると、自分で進める部分と講座へ任せる部分が見えてきます。

資格が決まった人向けの比較記事です。おすすめ順ではなく、講座で補いたい内容から選べます。

教育訓練給付は、自分の仕事に役立つ講座の費用を支える制度です。指定講座と本人の受給要件が必要で、受講前の手続きがある区分もあります。

給付制度の基本と根拠を読む
種類位置づけ基本給付
専門実践教育訓練中長期的なキャリア形成に資する教育訓練教育訓練経費の50%(年間上限40万円)を基本に、条件を満たす場合は追加給付あり
特定一般教育訓練速やかな再就職・早期のキャリア形成に資する教育訓練教育訓練経費の40%(上限20万円)を基本に、条件を満たす場合は追加給付あり
一般教育訓練その他、雇用の安定・就職促進に資する教育訓練教育訓練経費の20%(上限10万円)
2026年10月1日時点の厚生労働省公式情報を確認。実際の受給要件、追加給付、指定講座等は申込み前に最新情報を確認してください。

一次資料 厚生労働省「教育訓練給付金」/手続きの流れ


よくある疑問と参照資料
資格を取れば転職で有利になりますか?

資格が応募条件なら、取得によってその条件を満たせます。必須でない仕事では、これまでの経験や担当する仕事との関わりも判断材料になります。資格だけで全ての仕事に有利になるわけではありません。

国家資格なら民間資格より価値が高いですか?

価値は、その資格で何ができるかと仕事で使うかによって変わります。業務独占・名称独占・設置義務では、法律で認められることが異なります。仕事で使う民間資格なら、使う機会のない国家資格より目的に合うこともあります。

資格と実務経験ならどちらを優先すべきですか?

資格が仕事の条件なら、受験資格を満たして取得する計画が先です。ITコンサルタントや営業管理職など経験が重い仕事では、実際の案件を担当して成果を出すことが先になる場合もあります。希望する仕事の条件で順番が変わります。

40代・50代から資格を取るのは遅いですか?

年齢だけで一律に遅いとは判断しません。これまでの経験と組み合わせて、取った資格をどの仕事で、どのくらいの期間使うかを考えます。資格全体を学ぶより、必要な単元だけ先に学ぶ方が目的に合う場合もあります。年代別の論点は30代・40代・50代の各ハブで整理しています。

教育訓練給付の対象講座なら受けた方がよいですか?

先に仕事で使う資格と学び方を選び、候補に残った講座の費用を比べます。給付はその費用を支える制度です。指定講座かどうかに加え、本人が受給要件を満たすかも必要なので、対象講座という理由だけでは選べません。

この記事で確認した主な資料|E01〜E10

job tag各職業ページは2026年10月1日に再確認しました。職業情報と資格制度、教育訓練給付等は変更される場合があります。実際に受験・申込み・応募等を行う際は最新の公式情報をご確認ください。

本記事は、公的な職業情報と調査資料を基に、採用・実務・学習投資の視点で整理しています。運営者の経歴と評価の考え方は、運営者情報と評価基準をご確認ください。

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